紛争が生じた場合の典型的な解決方法は裁判です。
裁判では、法的判断に基づいて、誰が(何が)正しかったのかを決します。
では、すべてのトラブルについて、裁判で決着をつけてしまうのがいいのでしょうか。
紛争解決は、法的判断だけで足りるのか
紛争当事者には、いろいろな思いがあります。
たとえば、法的に下された結論を理屈では理解できるが、どうしても納得がいかない、
裁判で争われた点とは違うところが本当の問題点だと思うが、判決が出てもそこはまったく解決していない‥‥等々。
紛争において、当事者が法的な判断による解決を望んでいる場合があります。逆に、感情的に対立しており法的な判断で割り切れない場合もあります(感情的対立が激しいからこそ、法的に押し切るほうがいい場合もありますが)。
感情的な問題でなくても、法的判断だけでは、真の解決にならない場合もあります。企業間紛争のような場合でも、法的判断を避けるべきケースは多々あります。
このように法的判断だけでは、本当の解決にならない場合があるのです。
話し合いによる納得解決
トラブルが生じた場合、当事者が話し合い、その結果、お互いに納得できる結論に辿り着くことができれば、それにこしたことはありません。
しかし、当事者間で話し合いができないから、紛争になっているのです。
そこで、紛争当事者の間に第3者が入って、話し合い解決を図ることになります。
裁判所の調停(※1)はそのような解決方法のひとつです。
裁判所の調停は、国家機関の一部ですが、ADR促進法(※2)に基づく民間の紛争解決機関も多数存在します。
このように話し合いによる紛争解決機関はいろいろな種類があり、大別すると、法的判断を重視する判断型(※3)と、対話を重視する対話型(※4)に分けられます。
メディエーションは、対話型の典型であり、徹底した話し合いによる納得解決を目指す新たな紛争解決手法です。
1※裁判所の調停:簡易裁判所に附設される民事調停と家庭裁判所に附設される家事調停の2種類がある。
2※ADR促進法:紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年施行)のことで、民間紛争解決手続の業務に関し、認証の制度を設け、裁判外の紛争解決手続きを規定している。現在、法務省の認証を受けた組織は160ほどある。
ADRの詳細については、「Q&A ADRの基礎」をご覧ください。
3※判断型:司法型あるいは仲裁型ともいう。調停者が、紛争当事者の主張の妥当性を判断し、それに基づく解決案を提案・説得するモデル。
4※対話型:対話促進型ともいう。紛争当事者の主体性を尊重し、その自主的な対話と交渉を調停者が援助するモデル