◆メディエーションの本質

メディエーションは、対立する当事者間の失われた対話を復活、促進し,話合いによる徹底した自己決定に基づいて、両当事者が満足する解決をめざします。

 

そんなことが本当に可能でしょうか。二つの問題があります。

 

第1に、そもそも双方が満足する解決なんてあり得るのかが問題となります。

第2に、対話の復活は可能でしょうか。

 

第1の問題 WIN-WINについて

紛争当事者の双方が満足する解決なんてあり得るのかについてです。

ここでは、有名な「オレンジケース(オレンジの行方)」を題材にしましょう。

 

設例はこうです。

 

10歳の姉と5歳の妹が1個のオレンジを取り合っています。

母親のあなたにはどんな解決方法が考えられますか。

 

解答例には次のようなものがあります。

 

(1)姉に対して「あなたはお姉さんなのだから我慢しなさい。」と言って妹にオレンジ全部を与える。

(2)どちらが先にオレンジを見つけて持っていたのかを姉妹に聞いて妹に「お姉さんが先に持っていたのだからわがままを言うのじゃありません。」と言って姉にオレンジ全部を与える。

(3)いままでの経緯を姉妹に聞いて,多少姉に言い分がありそうだけれど「あなた方は姉妹なのだから仲良く二人で分けなさい。」と言ってナイフで二つに割って姉妹に与える。

(4)いままでの経緯とオレンジをどうしたいのかを姉妹に聞いたところ,姉はマーマレードを作るためにオレンジが欲しかった,妹はオレンジの実が食べたくてオレンジが欲しかった。そこで,オレンジの皮を姉に,オレンジの実を妹に与える。

 

研修等で、この設例を行うと、受講生からはいろいろな解決案が出てきます。たとえば、姉に半分に切らして妹に選択させるというのは必ず出ます。より公平性を高める方法と言えるでしょう。

母親が全部食べるというのもあります。逆に、もう1つ買ってきて1つずつ分け与えるというのもありました。1つを3つに切って親子3人で食べるというのはなんとなく素敵です。

 

 

WIN-WIN(勝ち勝ち)の関係

(4)の解答例は、もちろん寓話です。

上手に当事者の話を,聞き出せば,両方とも満足できる解決を得ることができる(場合もある)ということです。すなわち、WIN-WINです。

しかし、実際の事案で、両者が完全に満足する解決になることのほうが珍しいでしょう。WIN-WINはメディエーションの目指す方向性の問題と言い換えてもいいかもしれません。

 

メディエーションの目的は,WIN-WINの関係を目指すことにあります。