EAPとは、「Employee Assistance Program」の略で、「従業員支援プログラム」と訳され、従来、主にメンタルヘルス対策として導入されていました。
当初、アメリカでは、従業員のアルコール依存症対策として発展しました。同様に、日本では、メンタルヘルス対策・うつ病対策と進展してきました。
現在、EAPは、職場でのストレス・精神疾患・人間関係・コミュニケーション・ピアメディエーション・キャリア問題・法律問題など幅広い課題を扱います。
今日のEAPは、ストレスや病気を抱えた個人のケアに留まるものではありません。従業員個人や職場環境を阻害する問題(ストレス、精神疾患、パワハラ・セクハラ等のハラスメント、人間関係トラブルなど)への対処とともに、パフォーマンスを高める課題(ワークライフバランス、コミュニケーションスキル、ピアメディエーション、マネジメントスキル等)への取り組みも行います。
企業の抱えるEAPの課題は、企業の規模、業種、職種でまったく違いますし、その企業の歴史や風土などと複雑にからまり合い、一つとして同じものはありません。
したがって、異なる企業に同じ内容のセミナーを実施しても、一般教養は身につくかもしれませんが、EAPとしておおきな効果は期待できません。EAPの課題と施策は企業ごとに違うのですから、当該企業の状況・特徴等を調査・分析・協議したうえで、その企業にもっとも適切な方針を策定し、実施しなければなりません。したがって、企業外部のEAP専門家チームに委託する場合、企業の担当者がチームに参加して、協働で作業を進めることが肝要です。上手に工夫すれば、会社が劇的に変わります。
たとえば、企業内に現にメンタルヘルス不全者がいる場合、専門家のカウンセリングを利用できる体制やメール相談等のシステムの構築が必要ですし、外部の医療機関との連携やリワーク(※1)のスキームの整備も課題です。
あるいは、ストレスチェックやアンケート調査等の結果から、コミュニケーション環境の不全や同僚からの支援度の低下・欠如が指摘されるような場合、コミュニケーションスキル向上の研修やピアメディエーションシステムの導入を検討する必要があります(ピアメディエーションの詳細については、「ピアメディエーションプロジェクトの始動」あるいは 「職場のピアメディエーション」をご覧ください。)
それと並行して、研修の内容や各種制度のレベルも少しずつ上げていくこまやかな方針の検討が必要です。
EAPは、出来合いのお仕着せでは実効性に乏しく、各企業にフィットした手作りであることが重要なのです。
当事務所は、EAPコンサルティングセンターと連携して、このようなEAPを実現する取組を行っています。
EAPに関するご質問、ご相談等がありましたら、いつでも電話・メールでお問い合わせください。
担当事務 藤井秀一
1※リワーク:うつ病などの精神面の不調から休職した人の職場復帰を支援するリハビリのためのプログラムのこと。復職に向けたウォーミングアップを行うことをいい、いきなり職場へ戻って働きはじめるのではなく、専門の公的機関や医療機関などに通い、オフィスに似た環境で実施されるさまざまな復職支援プログラムを通じて再発リスクを軽減させる。療養生活から本格的な職場復帰へ、無理なくスムーズに移行させるのがねらい。