◆ピアメディエーションとは

 ピアメディエーションとは、従業員どうしの争い・もめごとについて、職場の仲間が間に入って解決することです。

 ここにいうメディエーションとは、仲介者が事実関係や善悪を一方的に判断するのではなく、紛争当事者の対話を促進し、話合いによる自己決定に基づいて、双方が満足する解決をめざすもので、当事者を「対立から対話」へ転換する手法です。

 欧米で広く活用されている手法で、傾聴技法、コミュニケーショントレーニング等をベースにしています。

 

◆職場でのピアメディエーションの意義

①人間関係の形成

 従業員が、ピアメディエーションを学ぶことにより、コミュニケーション能力が向上し、対話によってトラブルを解決する方法を学びます。従業員どうしの良好な人間関係・信頼関係が築かれ、職場の雰囲気が明るく、活気にあふれ、必然的に企業の生産性が向上します。

②メンタルヘルスの観点

職場のストレスは、人間関係の不全が最大の原因です。ピアメディエーションは、対人関係に基づくストレスを解消するもっとも有効な手段であり、メンタルヘルスにおける1次予防・2次予防、ラインケアに資する制度です。これによりパワハラ・セクハラを解決する基盤をつくります。

③人材の獲得

 仕事選びにおいて、近年職場の良好な人間関係を重視する傾向が強くなっており、人間関係を重視すべきであるとする就職斡旋機関やウエブサイトが増えています。職場の人間関係を改善し、コミュニケーション環境を整えるピアメディエーションを中核とした仕組みは、企業の大きな魅力であり、人材の獲得に直結します。

④離職率の低下

 離職率の低下につながります。人口の減少、人手不足、人材不足が深刻な状況において、いったん確保した人材が辞めていかないように定着を図ることは、企業にとって最重要課題です。離職に関する調査によると、離職理由として最も多く挙げられるのが、上司や同僚等との人間関係の不全です。

 メンター制度等と連携することにより、ピアメディエーションの取り組みは離職率低下の大きな武器になると期待されています。

⑤従業員にしかわからない問題

 職場のトラブルには、管理職にはよくわかりませんが、従業員なら把握している問題があります。職場の仲間が間に入るピアメディエーションが最も活躍する場面です。

(この点について、パワハラにより自殺したケースでの東京地裁判決が、参考になります。)

⑥企業文化の創出

 ピアメディエーションを取り組みは、対話によって紛争を解決することを通して従業員どうしが互いに尊重し共生を図っていくという企業文化の創造に繋がります。

⑦SDGsのゴール

ピアメディエーショの取組みはSDGsの目標に合致します。

ピアメディエーションが関連する目標は、次のとおりです。

 

4.質の高い教育をみんなに

すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

16.平和と公正をすべての人に

持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

 

◆ピアメディエーションの効果

ピアメディエーションを取り組むことによって、次のような効果があがると考えられます。

 

①自己理解、価値観の多様性の理解の深化

②従業員のコミュニケーションスキルの向上

③事実を客観的に理解する能力、事態を洞察する能力の向上

④同意を形成する能力の育成

⑤他者に対して共感し、自己の感情をコントロールできる従業員の養成

⑥組織内モラルの向上、生産性の上昇