3ピアメディエーション学会の設立

 

学会の設立に向けて

 

 次のステップとして、全国でピアメディエーションに取り組んでいる人々をつなぐため、なにか核となる組織が必要ではないかと考えました。研究・教育・実践内容の交流・深化、それと情報発信をはかる場です。

 2015年5月、シヴィルや茨田高校での研修でたいへんお世話になっていた立正大学教授(当時)の水野修次郎先生(以下水野先生と言います)にピアメディエーションに関する学会を設立できないかを相談しました。事務的な作業など実務はすべてこちらでやりますので、水野先生にぜひ中心になってもらえませんかとお願いしました。すると、水野先生は、少し間はありましたが、意外にあっさりと「では、作りましょうか」と言われましたので、そこから学会建設に向けての取り組みを開始しました。

 約1年間かけて準備作業を行い、2016年8月1日、学会設立の布石として、第1回ピアメディエーション教育研究会を開催しました。会場は、やはりピアメディエーションを関西でリードしてきた茨田高校において開催することになりました。

実は、この時期、一部にピアメディエーシ学会設立に反対の声もありましたが、なんとかことなきを得、設立の準備を進めました。

 

 その結果、2017年8月4日 大阪府立湊高等学校において、総勢130名の参加のもと、ピアメディエーション学会設立総会の開催にこぎつけました。水野先生による設立宣言がなされ、井上孝代教授の記念講演、各種活動報告、シンポジウム等が催されました。

中でも、印象深かったのは、茨田高校の卒業生石木碧さんのスピーチでした。彼女は、ピアメディエーションとの出会い・体験を語り、ピアメディエーションに出会って、「いい人」になれましたと語り、会場の笑いと感動を誘っていました。

 学会終了後、会場で彼女のスピーチを聞いていた大阪藝術大学の易寿教授と話をしました。易先生は、現代社会において、「いい人」になること自体がきわめて難しい状況にあり、彼女の言っていることはピアメディエーションの真の価値を端的に示している点で重要であり、たいへんすばらしいスピーチだったと話されたことをよく覚えています。

 

 その後、2018年には、大阪教育大学で第2回大会、2019年には、第3回大会が東京共立女子大学で開催されました。

 

2020 国際オンライン大会

 2019年12月5日、JR品川駅の構内にある喫茶店で、水野先生と今後の方針を協議しまた(水野先生との打ち合わせは、私が出張で東京に行った際に、エキナカですることが多い)。この段階では、2020年の学会の大会はイギリスからケンブリッジ大学教授のヒラリー・クレメン先生を招聘して、国際大会にするというものでした。2020年は東京オリンピックが開催され、大学の施設が8月は使用できない関係で、この時点で大会は9月に開催することを決めました。

 ところが、その後全世界で新型コロナの嵐が吹き荒れます。大会も開催する、しないの議論がありましたが、海外招聘はあきらめて、小規模で行う方向で決まりかけていました。しかし、突然(私にとっては)、水野先生が、オンラインでイギリスとつなごう、さらにニュージーランドのマイケル・ウイリアムズ氏(エッジウォーターカレッジカウンセリング長)もつなぎましょうということになり、国際オンライン大会を開催することになったのです。

 ここから、大会終了までドタバタが続きます。なかなか詳細が決まらなかったのですが、9月21日、22日に開催すること、メイン会場は大阪教育大学とすること、イギリスとニュージーランドをZoomでつなぐこと、日本からは4名の報告を発信することが決まり、大会テーマのコピーを確定してビラができたのが、9月1日でした。本番まであと20日です。

 


 大阪教育大学のメイン会場で、Zoomのテストをした際、音声が聞こえない、あまつさえ音が出ても会場全体がハウリングの嵐となったとき、本当に大丈夫かなと思いました。案の定、大会初日、早朝から準備をしていたところ、そもそもネットがつながらない、その原因も不明であるという報告を聞いたとき、私は会費の払い戻しを考えていました。

 その後も冷や汗ものの事態が続きましたが、あらゆる障害を乗り越えて大会は大成功に終わりました。オリンピックは開催されませんでしたが、ピアメディエーション大会は開催できました。しかも、その内容は、濃密できわめて刺激的なものです(具体的内容は、学会ホームペ-ジを参照してください)。

 

 まだまだピアメディエーション学会は、若い組織であり、内容・組織ともに発展途上にあります。今後、さらに組織拡大し、ピアメディエーションが全国に広がるよう全力で取り組んでいきます。

 

ピアメディエーターの認定、さらにコーディネーターの養成を

 学会公認のピアメディエーターの養成講座が活況を呈しており、現段階で30名強のピアメディエーターが誕生しています。この養成講座は、随時開催しており、希望者がどんどん増えている状況にあります。

 

 さらに、このピアメディエーターの資格認定者を対象にして、ピアメディエーターを養成する指導者としての技量を体得する講習会を実施し、併せて「ピアメディエーション・トレーナー」資格の認定を行うべく、制度の準備中です。