A 当事者間の対話を促進して紛争を解決するためには,調停者に和解を実現するという熱い気持ち,すなわち情熱が必要不可欠です。この熱い気持ちが大前提ですが,熱い気持ちだけでは対話は促進しません。Q7で,調停者は,紛争当事者の間に立ち相互理解ができるような対話を促進させる技術を持っている必要があると書きました。
調停技法とは、中立の立場で紛争当事者の間に入って、当事者の話を調整する技術のことを言います。とても簡単なことのように思われるかもしれませんが、紛争を起こしている当事者同士は、感情的になっていたりすることが多く、理論的に物事を考える能力が低下しているケーが多々あります。そのような当事者の間に入って、話を調整することは、高度な技術が必要になるのです。この点についてもう少し詳しく見てみます。
例えば、あなたは、両親の夫婦喧嘩の間に入ろうとしたことはありますか。自分が中に入って話をまとめようとして、上手くいかず、逆に自分自身もその喧嘩の中に巻き込まれてしまった経験はありませんか。両親の夫婦喧嘩に子供が関与することは、親子の関係もありますので、複雑な面もありますが、とても難しいとお感じになられたと思います。このように、紛争当事者の間に入って中立な立場で当事者の話を調整することには、技術が必要なのです。
アメリカのメディエーションの場合,メディエーターは,調停の技法を習得する必要があることを書きましたが(Q5),その技法としては,イントロダクション・アクティブリスニング(傾聴)・パラフレージング・リフレーミング・サマライジング・オープンエンドクエッションといったものがあります。
こういった技法を習得する前提として,メディエーションにおける聞くということの重要性についてしっかり理解しておく必要があると思います。そのために,項を変えて,臨床心理の観点から「聞く」ということの意味について考えたいと思います。