Q7 理想的な揉め事・紛争の解決の仕方とはどんなものですか。


A 揉め事・紛争は自分が持っている要求を他の人の要求を退けることで満足させようとするところで発生します。理想的な紛争の解決の仕方は、他の人の要求を受け入れたうえで自分の持っている要求を獲得することです。

 

ここで、現在どのような揉め事・紛争の解決の仕方をしているのか確認してみましょう。

例えでよく引用されるのが、オレンジの揉め事です。これは姉妹が1つのオレンジを取り合いしているところへお母さんが来てこの揉め事を解決するのですが、その方法がいろいろあります。

 

1つ目の方法

姉に対して「あなたはお姉さんなのだから我慢しなさい。」と言って妹にオレンジ全部を与える。

 

2つ目の方法

どちらが先にオレンジを見つけて持っていたのかを姉妹に聞いて妹に「お姉さんが先に持っていたのだから我儘を言うのじゃありません。」と言って姉にオレンジ全部を与える。

 

3つ目の方法

いままでの経緯を姉妹に聞いて、多少姉に言い分がありそうだけれど「あなた方は姉妹なのだから仲良く二人で分けなさい。」と言ってナイフで二つに割って姉妹に与える。

 

4つ目の方法

いままでの経緯とオレンジをどうしたいのかを姉妹に聞いて、オレンジの皮を姉に、オレンジの実を妹に与えた。姉はマーマレードを作るためにオレンジが欲しかった。妹はオレンジの実が食べたくてオレンジが欲しかった。

 

さて、このお話ですがあなたはどの方法が理想的な紛争解決方法だと考えられますか。また、現在行なわれている紛争解決方法はどの方法だとお考えですか。

 

1つ目の方法は、一般社会に通常ある解決方法です。権力を持つものが紛争の解決案を出し、紛争当事者に有無を言わせず従わせる方法です。紛争当事者は解決案を受け入れないと権力を持つ者から後でどのような不利益を受けるかも知れないので表面上は従順に解決案を受け入れ紛争は解決します。

解決案を提示した権力を持つ者は自己の哲学、正義感で紛争解決をしましたので社会正義は保たれていると考えています。しかし、紛争当事者の一方については紛争の解決にはなっていません。

 

2つ目の方法は、どちらに正当性があり権利があるかを紛争当事者に聞いて紛争解決案を提示する方法です。民事裁判はこの方法で処理されます。法律と言うルールで定められた範囲での主張のみが解決案作成の基礎となります。

ルールを知らなくて主張できなかったこと、ルールを度外視した主張は解決案作成には採用されません。ルールを熟知した専門家でないと自分の主張をうまく言えないため紛争当事者に不満が残る場合が多々あります。

 

3つ目の方法は、正当性や権利の有無についての双方の主張は聞きますが、厳格にルールに則った方法での解決案だけで紛争解決の道筋をつけるのではなく、紛争当事者各々に譲歩をしてもらい紛争を解決していく方法です。紛争当事者の間に立つ者は紛争当事者に譲歩をしてもらうために説得をしたり、紛争解決案を提示したりします。裁判所で行なわれている調停や和解の手続です。

 

4つ目の方法は、正当性や権利の有無についての双方の主張は聞きますがあまり重視はしません。紛争当事者の真に望むものは何かを各々に主張してもらい紛争当事者相互に相手方が望むものを理解してもらって解決案を紛争当事者で策定してもらいます。紛争当事者の間に立つ者は紛争当事者の権利の把握のみではなく、何を求めて紛争しているのかの把握を大事にして紛争当事者に紛争の背景にあるものを自覚してもらうよう努める手続をします。一般社会で行なわれているじっくり話し合って相互理解をして合意する方法です。

 

4つ目の方法が紛争当事者の最も望む解決方法でしょうが、現実問題として紛争当事者は感情的になったり、お互いに絶対譲れない要求なのだと思い込んだりしていますので、相手方のことを理解することはとても難しいことです。

そこで、紛争当事者の間に立ち相互理解ができるような対話を促進させる技術を持つ調停者を入れて紛争解決を図る仕組みが必要となります。

 

よく訓練された調停者によって紛争当事者が対話を通じて相互に紛争の原因や背景を確認して相手方の望んでいるものを理解したうえで、紛争解決案を紛争当事者で作成する。紛争当事者自身が決定した内容で紛争を解決することが理想的な揉め事解決の仕方です。