Q1 ADRとは何ですか。


A ADRとは,Alternative Dispute Resolutionの略ですが、直訳すると、「代替的な紛争解決手段」ということで、一般的には、裁判以外の紛争を解決する手段・方法を意味します。

 

人が二人以上集まると、その間に愛情や友情が芽生えることもありますが、逆に揉め事・紛争・トラブルも生まれます。この揉め事・紛争・トラブルにもいろいろなものがあり、近所同士の揉め事もあれば企業間のトラブル、果ては国家間・民族間等の紛争まで、規模や性格において様々です。

こういった紛争の解決手段として、私たちに最初に頭に浮かぶのは、裁判所の裁判ではないでしょうか。しかし、すべての紛争を裁判所に持ち込むのは、いろんな意味で妥当とは言えませんし、現実的でもありません。

 

すなわち、裁判は、法律に基づく厳格な手続規定に基づいて運営されており、素人が裁判を自力で行うのはかなりしんどい話です。そこで、弁護士や司法書士に依頼するということになりますが、これにはお金がかかります。また、最終的に判決が出て紛争に終止符が打たれるまでに相当な時間がかかります。さらに、大事な点ですが、裁判による紛争の解決の仕方は、白か黒かです。勝つか負けるかの世界で、灰色決着というのはありません。原告の請求を認容する判決か、請求を退ける棄却判決かのどちらかです。

 

紛争の中には、このような裁判手続で決着をつけるほうが適切だと考えられるものもありますが、そうでない紛争もたくさんあります。例えば、マンションの住人同士の揉め事(上がうるさいとか、ペットをなんとかしろ等々)を裁判で争うということになれば、場合によってはどちらかがマンションを出て行かなければならない事態になるかもしれません。かといって、住人同士の紛争が感情的なものになって、当事者間で話し合いができない状態になっている場合、そのまま放置しておくこともできません。このような場合、第3者が間に入った適当な話し合いの場があれば、問題を円満に解決することができるかもしれません。

 

このように、紛争によっては裁判以外の方法で解決するのが適当な場合があり、そのための解決手段・方法を総称してADRと呼んでいます。したがって、紛争の種類や性格によって、いろいろな種類のADRが存在することになります。